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選りすぐりの水道橋 居酒屋

蛍光灯が乳白色の光を投げかけていたが、影はなかった。 判事の右側には、M社の新規テクノロジーの統括マネージャー、R氏が穏やかな顔ですわっていた。
証人席は奥の隅に押しつけられていて、判事の椅子より数十センチは低い位置にあり、小柄なR氏はますます小さく見えた。 だが、その口から出る嘘は、はるかに大きかった。
R氏は、問題の1995年のN社とのやりとり、とりわけ、6月の会合で、マイクロソフト側の中心となっていた人物だった。 政府は、この会合の席で、M社がS社に圧力をかけて、ウィンドウズのブラウザビジネスから手を引かせようとしたと主張していた。
電子メールがつぎつぎと公開されて、M社が、N社が帝国の脅威となりつつあることを恐れていたことが明らかにされていった。
B氏さえ、あの有名なインターネットの大津波メモでそういう意味のことを書いていた。
だが、信じがたいことに、R氏は、自分はそういう見方はしていなかったといった。 ずんぐりした、顎のない、すこし青ざめた顔の(照明のせいだろうか?)R氏は、かぼそい声で語った。
N社は競争相手ではなくパートナーになりたいといいました。 わたしは彼らを信じました。

R氏のことばを信じた者はほとんどいなかった。 ただし、彼の妻だけは例外だったかもしれない。
最前列で両手を握り締めてすわっている様子は、リトルリーグで息子の応援に来た母親が、小さな強打者が何度も何度も三振するのをじっと見守っているかのようだった。 B氏本人がN社を競争相手とみなしていたという事実を突きつけられたとき、R氏はこうこたえた。
N社の意図については、B氏よりもわたしのほうが正確な見方ができていたと思います。 J氏判事が見開いた目をくるりとまわし、世界中から集まったマスコミ関係者はどっと笑い声をあげた。
E氏は大きな両肩をがっくりと落とした。 V氏がR氏の翼をむしり続けるのを見ていたら気がめいってきたので、E氏は、昼の休廷時間のあとも法廷へはもどらなかった。
1998年8月にビデオ撮影された、B氏の20時間におよぶ宣誓証言が、マイクロソフトの奇妙な抗弁の調子を決めていた。 テープのなかで、B氏は大きすぎる革張りの椅子にむっつりと腰かけて、政府側の弁護士を相手に、たとえば「定義」ということばの定義についてあれこれ難癖をつけたり、宣誓証言なのに「知らない」とか「記憶にない」とか「思いだせない」とかいった返答を200回以上もくりかえしたりした。

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